8月3日に行われた組み合わせ抽選会で、夏の甲子園初戦の対戦カードが決まった。
各地区を勝ち抜いてきた好チームとあって接戦が予想されるが、中でも注目を浴びたのが神奈川代表・東海大相模と滋賀代表・近江の対戦である。
2019夏の決勝でもおかしくない対戦カードだけに「ちょっと待ってよ…」というのが本音だ。
ただ、この一戦は高校野球ファンにとってはたまらない試合になる。
以下の記事で僕は東海大相模の勝利を予想したものの、とてもじゃないがスペースが足りなかった。
2019夏の甲子園を大きく左右するであろう対決の考察を書く。
同様に初戦屈指の好カードとされている花咲徳栄VS明石商業の一戦についても、参考になるものがあれば嬉しい。
参考:花咲徳栄VS明石商の予想|見どころは「徳栄打線と中森投手」以外にある
参考:夏の甲子園2019の展望予想|ベスト8に残るチームを独断で選んでみた
目次
本当の見どころは相模打線VS林優樹ではない
破壊力抜群の東海大相模打線と大会ナンバーワン左腕の林優樹投手。
大方の予想では東海大相模打線をいかに林投手が抑え込むかが注目されている。
実際のところ、近江は林投手と主将の有馬諒捕手を中心に滋賀大会を失策0で勝ち上がった。
加えて林投手は滋賀大会4試合で計26回を投げて無失点と盤石。
この堅い守りは甲子園でも武器になるだけに、組み合わせ抽選会前の予想でもベスト8は間違いないと見ていた。
それ故に全国屈指の東海大相模打線との激突はあまりに贅沢な試合だと言える。
ただ、この試合の本当の見どころは別にあると個人的には見ている。
ずばり「近江打線VS東海大相模投手陣」の戦いだ。
堅守に注目が集まる一方で、今年の近江はむしろ打線の強さが光る。
一番・土田龍空遊撃手に三番・住谷湧也中堅手と、打撃センスのある二人の左打者は共に打率5割超え。
六番・三浦聖太右翼手に七番・岡田拓也左翼手も好調を維持するなど、滋賀大会5試合のうち3試合でコールド勝ちを収めているのが何よりの証拠だろう。
だからこそ、近江打線に対して東海大相模の投手陣がどんな投球を見せるか。
それこそが初戦屈指の好カードの勝敗を分けるように思う。
参考:近江・住谷湧也が打率の記録を塗り替えたのは必然だったのかもしれない
東海大相模投手陣は近江打線を抑えられるか
東海大相模の投手陣がどう近江打線を封じるかに注目したいが、結論から言うと、近江打線を完封することは難しいと考える。
上では触れなかったが四番を打つ有馬捕手も打率は4割を超えており、この打線を相手に失点0を見込むのは現実味に欠ける。
東海大相模としてはむしろ「2点はオーケー」くらいの割り切りが必要なのではないだろうか。
ピンチの場面で無理に前進守備を敷いて大量失点などとなっては元も子もない。
ちなみに東海大相模の投手陣は6人で、うち4人がサウスポー。神奈川大会7試合で失点は10と、3点以上を奪われた試合はなかった。
個人的には抜群の安定感を誇る背番号11の左腕・諸隈惟大投手の先発からエース右腕・紫藤大輝投手へのリレーを予想するが、正直まったくわからない。
そもそも、わかるわけがない。
6人の投手は誰が投げても試合を作れる能力を持っているからだ。
仮に紫藤投手が近江との一戦で先発のマウンドに上がらなかったとしても、温存でも奇策でもない。
そして、どうしてもこの東海大相模の投手陣が大崩れすることが想像できなかった。
僕が東海大相模の勝利を予想した理由はここにある。
大量失点さえ喫しなければ、打線でどうにかする攻撃力が今年の東海大相模にはあるからだ。
参考:東海大相模・諸隈惟大は中学全日本MVP|抜群のキレと投球術は世代トップ
絶対的エースか、層の厚さか
ともに優勝候補として名前が挙げられながら、この二校は実に対照的だ。
絶対的エースを擁する近江と、投手陣の層の厚さで勝ち抜いた東海大相模。
どちらが正解という話をするつもりは毛頭ないが、事前の対策においても僅差で東海大相模に分があるように感じる。
ほぼ林投手一本で対策を練られる東海大相模と、試合当日まで相手投手がわからない近江。
もちろん林投手は「それでも打たせない投手」だし、前述の通り近江打線も強力だ。相手投手が誰であろうと小事かもしれない。
何より初戦での登板となるだけに、コンディション万全の林投手を送り込めるのはこの上なく強い。
ただ、実力的に拮抗する状況において、試合に大きく影響を与えるのはやはり「準備」なのではないだろうか。
参考:林優樹(近江)がドラフト候補の高校生左腕で一番気になるのはなぜか
東海大相模打線は長打だけじゃない
最後に、やはり触れずにいられない林投手と東海大相模打線について。
東海大相模打線は井上恵輔主将や西川僚祐選手、山村崇嘉選手らをはじめ強打者がズラリと並ぶ打線に注目が集まっている。
高校通算45本のホームランを放っている遠藤成選手が下位に入ることもあり、「切れ目のない打線」とはまさにこのことを言うのだろう。
だからこそ高校ナンバーワン左腕の林投手と対決することは本当に楽しみなのだが、東海大相模打線の強みはホームランや長打ではない。
たとえば、天才的なバッティングを見せるリードオフマン・鵜沼魁斗選手はホームランを打てる強打者である。
しかしその鵜沼選手は、セーフティーバントを決めて相手を揺さぶったりもする。
さらに東海大相模の選手は走塁の上手さが光るが、その最たる例が単打を放った際の「オーバーラン」だ。
これだけ打てるチームでありながら、少しでも隙を見せようものなら次の塁を陥れるような、走塁への高い意識をチーム全員が持っている。
大量得点の裏にはこういった相手へのプレッシャーも確実に影響していて、対峙する相手投手はマウンド上で神経をすり減らしていたはずだ。
緻密さも兼ね備える今年の東海大相模は、本当に強い。
参考:東海大相模・鵜沼魁斗の強打に注目|安打量産のずば抜けた打撃センス
この一戦は2019夏の甲子園を大きく左右する
ともに優勝候補として注目されていた東海大相模と近江。
組み合わせが決まった瞬間から僕の周りでは、さして高校野球に詳しくない人たちも盛り上がっていたが、それだけインパクトのある試合だ。
この一戦はとにかく楽しみで仕方ない。
夏の甲子園は例年盛り上がるが今大会も様々な優勝予想がされていて、自分も然り、ぶっちゃけどれを見ても外れな気がする。
反論の余地がありすぎる。
それだけ各ブロックで接戦が多くなりそうな予感がある。
だから個人の予想など一種の戯言でしかないのだけど、強いて言うとしたら。
この試合での勝者が甲子園優勝の本命に名乗り出ることは間違いないと思う。
最高のゲームに期待して、6日目の第2試合を心から楽しみにしたい。
参考:東海大相模・山村崇嘉がホームラン量産|二刀流はどちらでプロ入りか