コラム

智弁和歌山が甲子園初戦で見せた強さ|優勝候補との呼び声に納得の理由

2019夏の甲子園、米子東との初戦を8対1で勝利した智弁和歌山。

結果だけ見ると圧勝のようにも感じるかもしれないが、内容としては非常に厳しい試合だった。

米子東のエース左腕・森下祐樹投手の前に打線はなかなか得点を奪えず、5回を終えたときには1対0で辛くもリードしている展開。

甲子園の初戦を勝つことの難しさはよく語られるが、その象徴のような試合展開だった。

ただ、その初戦をしっかりと勝ち切ったことには心から拍手を送りたい。

この記事では、初戦で感じた智弁和歌山の強さについて書く。

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目次

大前提として米子東について

まずこの試合に触れる上での大前提として、米子東は強いチームだということ。

「初戦でこんなに苦戦してる智弁和歌山の優勝はない」的なニュアンスの声も散見されるが、個人的には渾身のギャグだと思っている。

2019春のセンバツでも好チームだと感じたが、米子東は本当に力のあるチームであった。


この初戦でも特に6回表に同点になった場面で、米子東の脅威を感じた智弁和歌山ファンは少なくなかっただろう。

あの一死満塁を凌いだ池田陽佑投手のピッチングは見事だったが、試合展開が変わってもおかしくない局面だった。

米子東は強かった。

大前提を改めてお伝えした上で、話を進める。

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大観衆にインパクトを与えた二人

終盤に猛攻を見せた智弁和歌山打線の攻撃は素晴らしかったものの、中盤までは均衡していた米子東との初戦。

接戦の中でまず素晴らしい活躍を見せたのがエース右腕・池田陽佑投手だ。

各イニングで最速は140キロ台中盤から後半のストレートを投げ込み、8回を投げて最速が142キロに止まったのが4回のみ。

あえて「止まった」と書くが、その球威は他チームにとっても脅威に映ったはずだ。

例年にも増して強力だと言われる智弁和歌山の投手陣で、背番号1を勝ち取っただけある。

また、その池田陽佑投手からバトンを受けて最終回に登板した2年生右腕・小林樹斗投手もマウンドで存在感を示した。

この回8球投じたストレートはいずれも140キロを超え、甲子園球場の球速表示には「146」「148」という数字が当たり前のように続いた。

無論、球速がすべてではないことは言うまでもないが、智弁和歌山投手陣の力を示すにあたっては十分なインパクトがあったように思う。

さらに貴重な左の矢田真那斗投手、1年生で140キロ超の右腕・中西聖輝投手も控えていることを考慮すると、和歌山大会でわずか1失点だったことも合点がいくのではないだろうか。

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初戦のMVPを選ぶとしたら

優勝候補として目されるチームが誇る強力な投手陣。

その投手陣をリードするのが、東妻純平捕手だ。

言わずと知れたドラフト注目のキャッチャーである。

初戦のMVPを選んでくれと言われたら、多くのファンが彼の名前を挙げるだろう。

勝ち越しのタイムリー三塁打を含め3安打2打点の活躍は素晴らしいものがあったし、好リードで米子東に決定的な一打を許さなかった。

間違いなくこの一戦の中心には東妻捕手がいた。

印象的だったのは四回表、二死で迎えた一・三塁のピンチ。

0対0の中で何としても得点を許したくない場面だったが、相手打者は五番の強打者・福島悠高選手だ。

ボール球が3つ続いた後の1球に、東妻捕手は「スライダー」を選択してストライクをとり、その後フライアウトに打ち取った。

結果論にすぎないが、もし仮にストレートを投げていたら強振されていた気もする。

この他にもストレートに球威がある本格派の二人に対して無理に力で押さず、丁寧に変化球を要求するあたりは見事だった。

2019春の近畿大会・智弁学園戦で大量失点を喫した教訓が活かされていたように思う。

ともあれ、この試合での東妻捕手の存在感は群を抜いていたと言える。

かつては四番を打っていただけに仕方がない面もあるが、「六番に下がった」という表現はもはや相応しくないように感じる。

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鉄壁の三遊間

バッテリーが素晴らしい活躍を見せた一方で、野手陣で好守が際立ったのが三遊間の二人だ。

まずサードを守る綾原創太選手は、2回表にいきなりファインプレーを見せる。

無死一塁の場面で三遊間寄りの強烈な打球を好捕し、素早く二塁へ送球。セカンドの黒川史陽主将が一塁へ送ってゲッツーを完成させた。

このワンプレーは序盤に流れを渡さなかった、大きな要因だったように感じる。

また1年時から好守が光る、ショートの西川晋太郎選手も初戦から魅せてくれた。

相変わらずの安定感に加え、6回表に見せたプレーが圧巻だった。

一死一・二塁の場面で米子東の四番・岡本大翔選手が放った打球は三遊間へ。

レフトへ抜けるかと思われた打球に西川選手が追い付き、素早く三塁へ送球。

サードの綾原選手が完全に「えええ!それ追い付くのかよ、嘘でしょ!?」となっていたため、ややベースに付くのが遅れてセーフ(記録は内野安打)になったものの、西川選手の守備力の高さを改めて感じたプレーだった。

いつかの試合で西川選手に打球が飛ぶたびに実況が「好守の西川」を連呼していたことを思い出した。

わかる。わかるよ、気持ちは。

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奮起した二人の裏で

またこの試合では、和歌山大会で苦しんだ二人の奮起も大きかった。

先ほどファインプレーで紹介した九番・綾原選手と、途中出場の佐藤樹選手。

それぞれ予選では打率1割台と苦しんだだけに、その二人にタイムリーが出たのは今後の戦いにも好影響を及ぼすだろう。

一方で、主力である一番・黒川選手と三番・西川選手はノーヒットで終わった。

黒川選手は3打数ノーヒット、西川選手は5打数ノーヒット。

この事実もまた智弁和歌山の強さを示していると思うのだけど、言い方を変えると「主力の二人が打てなかったにもかかわらず」8得点を記録したのだ。

俊足の細川凌平選手、1年生四番の徳丸天晴選手はそれぞれ2本のヒットを放ったし、打線としても終盤の集中打は見事と言うほかない。

そして、語弊を恐れずに言うと、最後の甲子園での打率なんてさほど重要ではない。

やや極端な表現にはなるが、打つべき場面で打てればそれでいいと考える。

さながらWBCでのイチロー選手のように、もし仮に不調であろうと「ここぞ」という場面で打ってくれれば何の問題もない。

黒川選手と西川選手はそれが出来る選手だから、心配など皆無だと思う。

というよりも、たった1試合ノーヒットで終わっただけで心配される方が本来は凄いことだと、我々は気付いた方がいいのではないか。

ちなみに根来塁選手に関しては2打数1安打にも関わらず、観客からは「調子悪いのかな…」との声も聞こえてきて普通に笑った。

全打席ヒットを期待したくなる気持ちはわかる。それほどのバッターだ。

ただそれよりも、長打になりそうなレフトへの痛烈な打球に対して、クッションボールの処理が抜群に上手かったことに誰か共感してほしい。

…脱線が過ぎるのでそろそろまとめると、今年も智弁和歌山は強い。

次戦・明徳義塾との因縁の対決は、順当に進めば大会8日目(8月13日)。

大いに注目して、この一戦に熱狂したいと思う。

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