コラム

北海道の高校野球が弱いと言われる時代はもう終わっている

星稜との激戦を制し、履正社が優勝を収めた2019夏の甲子園。

例年にも増して接戦が多くて面白かったが、北海道出身として触れなければいけないことがある。

みんな薄々気付いているはずだ。

甲子園で戦った南北の北海道代表、強かったよね?

北北海道代表・旭川大高と南北海道代表・北照はともに初戦で敗れたものの、強豪相手に互角の戦いを見せたことには心から拍手を送りたい気持ちである。

そして、もう声を大にして言いたい。

北海道の高校野球が「弱い」と揶揄される時代は終わったよ、と。

Sponsored Link

目次

北海道の高校野球はバカにされてきた

実際のところ、かつて北海道の高校野球はレベルが低いと見られていた。これは紛れもない事実だ。

2004年に北海道勢初の優勝を果たした駒大苫小牧も、公式練習などでベンチを変わる際に他県の強豪から「さあ早くどけてくれよ~」的な扱いを受けたと聞く。

初めて聞く人には衝撃的かもしれないが、こんなことは序の口というか割とよくある話だ。

私事で恐縮だが10年以上前、中学時代に全国大会に出場したときにも、高知にある某名門高校の付属中学の選手たちにお子ちゃま扱いを受けたことを鮮明に覚えている。

大人顔負けのがっしりとした体格の選手が背番号4をつけていて、「お前絶対ファーストだろ」と心の中で突っ込んだものだ。

ずらした視線の先にいた背番号3の選手は更にもう一回り大きかった。

こんな感じで明らかな体格差があり、開会式で隣に並んだときには見事に鼻で笑われた。

「見下す」という言葉の意味を、テレビドラマ以外で初めて知ったのもあのときだったように思う。

ただ今になって思うが、彼らもきっと悪気があったわけではない。

北海道の野球は弱い。当時はそれが「当たり前」だったのだ。

Sponsored Link

2019夏の甲子園で北海道代表が見せてくれたもの

ただ、そんな話はもう過去のものである。

札幌円山球場や旭川スタルヒン球場で観る激闘は、悔しいが僕が現役だった10年前よりもずっと底上げされている。

2015春のセンバツで東海大四(現東海大札幌)が準優勝を果たしたり、2016夏の甲子園で北海が準優勝を果たしたり。

駒大苫小牧が三連覇を目指して戦ったあとを見ても、贔屓目なしにレベルが高くなったことは明らかだろう。

そして2019夏。北海道代表の二校が見せてくれた戦いぶりは、何よりその事実を証明してくれた。

今年の旭川大高と北照は強かった。本当に強かった。

Sponsored Link

準優勝の星稜と投手戦を繰り広げた旭川大

まず大会2日目に登場した北北海道代表の旭川大高。

優勝候補筆頭の星稜を相手に、ぶっちゃけ誰もが「星稜の楽勝」を予想していただろう。

北海道民でさえ「旭川大が勝てる」と思っていたのは一部の野球に詳しいファンくらいだったと思う。

しかし旭川大ナインは、そんな予想を見事に裏切って見せた。

緊迫した投手戦を繰り広げ、終わってみればスコアは0対1。

優勝候補を相手にこれほどの勝負を見せながら、エース・能登嵩都投手をはじめ試合後に涙する選手も多かった。

本気で勝てると思っていたからだ。

ちなみにあの試合は能登投手の好投が素晴らしかったのは言うまでもないが、旭川大高が見せた可能性はそれだけではない。

四番の脇田悠牙中堅手奥川恭伸投手を相手に2本のヒットを放ったし、プロ注目・持丸泰輝捕手が最終回に放った大きなライトフライは風が無ければおそらくスタンドに飛び込んでいた。

勝負の世界に「たられば」を持ち込むほどダサイものはないが、相手が相手だけにもっと評価されて良いだろう。

八回の樋口唯斗右翼手のバックホームは心から震えたし、さらに九回一死一・二塁のピンチの場面。サードゴロで併殺を完成させた佐藤一伎三塁手も見事だった。

落ち着いた打球処理から三塁ベースを踏んで、即座にファーストへ送球。鳥肌が立ったし涙が出そうになった。

熱闘甲子園の秀逸すぎる映像は、どうやったら涙なしに見れるのか教えてほしい。

「マジ甲子園本当に楽しいから」

この夏一番の名言かもしれない。

Sponsored Link

ベスト4の中京学院大中京と互角に渡り合った北照

大会6日目に登場した北照も、旭川大に続き素晴らしい戦いを見せた。

ちなみに大会6日目は東海大相模VS近江をはじめ好カード目白押しで、第3試合の北照と中京学院大中京の試合は言うほど注目度が高くなかった。

中京学院大中京がベスト4に入るほどのチームと予想できた人も少なかっただろうが、この試合で北照の勝利を予想できた人はもっと少数だったはずだ。

しかし北照ナインは、前評判を覆すような戦いを見せた。

0対0で迎えた六回に四番・桃枝丈投手のタイムリーで先制点を挙げたときには「おい、ワンチャンあるぞこれ」と誰もが思ったはずだ。

何より強打の中京学院大中京を相手に前半を0対0で折り返したことが素晴らしい。

北照は毎年バッティングの良いチームを作り上げてくるが、今年はショートの伊藤陸主将や佐藤陸斗捕手をはじめ守備の良さが光った。

七回に4点を奪われて逆転を許したものの、”よく4点で抑えた”。

南北海道大会準決勝の駒大苫小牧戦に、決勝の札幌国際情報戦。

いずれも相手に一気に流れが傾きかねない場面で冷静に後続を断ったことは記憶に新しいが、ここに今年の北照の強さを感じた。

あの優勝候補・東海大相模でさえ、波に乗った中京学院大中京を止められずに七回に7失点を喫している。さらに言うと作新学院も七回・八回で6点を失った。

終盤に強い中京学院大中京を相手に、北照がよく戦ったことがわかる。

さらに、八回・九回と1点ずつを返して追い上げを見せる粘りには感動すら覚えた。

九回に山崎昂大中堅手が1点差に迫るタイムリー二塁打を放った際、あのポーカーフェイスの桃枝丈投手がベンチで見せたガッツポーズに魂が震えた高校野球ファンも多いのではないか。

惜敗を喫したものの、強豪を相手に北照ナインはこの上ない戦いを見せてくれた。

Sponsored Link

北海道の高校球児はもっと自信を持っていい

別に今に始まったことではないが、せっかくの機会なので言いたい。

北海道の高校球児はもっと自信を持っていい。

そして、誇りを持って北海道代表として戦ってほしい。

北海道の高校は弱い。地方の高校は弱い。

そんな風に言われ続けて久しいが、もはやその見方自体が「古い」。

大阪のような激戦区と比較されたらさすがにまだ全体的に小粒感は否めないし、2019夏の甲子園も「勝てなかった」と言われたら確かにその通りだ。

ただ、客観的に見ても、ベスト4に駒を進めた二校と互角の戦いをしておいて「力がない」と見られるのは些か不可解でもある。

甲子園の大会期間中にも関わらず「今年の甲子園はドラフト的に不作」というような記事を読んで最高にげんなりしたが、言い方を変えればもはや「名門だから」「スーパースター一人で」勝てる時代ではないのだ。

令和の時代に、僕らの高校野球の見方も変わっていくべきなのかもしれない。

ちなみに、北海道の高校球児は甲子園で観たかった逸材がまだまだいる。

ドラフト候補として東海大札幌・小林珠維投手の名前が挙がっている一方で、鈴木一茶投手も素晴らしかった。センターの柿澤英寿選手も。

北海の辻本倫太郎遊撃手や駒大苫小牧・竹中研人捕手、旭川北の伊東佳希投手もそうだし、網走南ヶ丘の石澤大和投手だって十分に全国の強打者と渡り合えたと思う。

札幌国際情報の原田航介投手は確実に2020年も北海道を沸かせるはずだ。

キリがないのでこの辺にするが、最後にもう一度言う。

北海道の高校球児はもっと自信を持っていい。

近い将来、あの優勝旗が再び津軽海峡を越える日を心から楽しみにしている。

2021ドラフト候補の逸材もチェック!
全国の注目選手はコチラ
2020新入生も超ハイレベル!
全国の注目選手をチェック