コラム

北海高校が札幌国際情報との一戦で見せた強さには心底感動した

札幌国際情報にサヨナラで敗れて2019夏の戦いを終えた北海高校。

1年生が4人ベンチ入りを果たすなど例年になく若いチームだったが、終盤に追いつくなどシーソーゲームの中で見事な粘りを見せた。初めて野球観戦に来る人が見たら一発でファンになってしまうような素晴らしいゲームを見せてくれた。

辻本倫太郎主将を中心に高いポテンシャルを秘めたチームだっただけに残念ではある。もっと観たかったのが本音だ。

ただ、繰り返しになるが、北海ナインは素晴らしい試合を見せてくれたし、その戦いぶりにはめちゃくちゃ感動した。

この記事は、北海が最後の夏で見せてくれた強さについて書く。

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鋭い当たりを連発する攻撃力

まず札幌国際情報戦で見せたのは打撃面での強さだ。

北海には志村瞭左翼手・渡辺颯斗中堅手ら左打者をはじめ力のあるバッターが並んでいるのは知っていたが、この試合も北海ナインの打席での集中力は素晴らしいものがあった。

中でも存在感を示したのは、二番・ファーストで出場の太田良平選手である。

以前から鋭いスイングには定評がある右打者で主力としての実力は十分にあった選手だが、左右に放った2本の三塁打はそれぞれ貴重なタイムリーとなった。

特に2回のライトへの打球は凄まじく、低い弾道でグングン伸びた。右打者で逆方向にあれだけの打球を飛ばせるのは見事としか言いようがない。

また、三番・レフトで出場した志村選手の打球もかなり速かった。

初回に引っ張ったライト線への当たりは見事だったし、その後の打席でも、記録上はアウトになったフライも含め、ほぼ捕らえている印象を受けた。

辻本選手はインコースの変化球をライトに弾き返す巧さを見せたほか、渡辺選手のセンター返しも含め、コースに逆らわないバッティング技術はさすが名門だけあると感じた。

若いチームを支える精神力

高い技術もさることながら、札幌国際情報戦で見せたのは上級生たちの精神的な強さだ。

この日のスタメンには1年生が3人並んだ。木村大成投手と工藤泰己捕手のバッテリーに、四番に座った宮下朝陽三塁手

スタメンの中心とも言える位置に1年生を起用したことで「もう来年を見据えてるのでは」との意見も出そうだが、無論そんな話ではない。

本格派左腕の木村投手が投げ込むボールはとても1年生とは思えない勢いがあるし、このバッテリーは春から出場して活躍を見せている。

また宮下選手は初回にあわやホームランかというレフトへのタイムリー二塁打を放ったほか、その後もチャンスでしっかりセンター前ヒットを打って後ろに繋ぐなど十分に機能していた。

おそらく学年を聞かなければ観客の大半は彼らが1年生であることには気付かなかっただろう。

ただ、それもやはり上級生の気配りが背景にあってこそだと感じる。

辻本選手はショートのポジションから何度も大きなジェスチャーで工藤捕手に投内連携を確認していたし、好守で盛り立てた藤田陸来選手は先発の木村投手に対してセカンドから大きな声をかけ続けた。

宮下選手がネクストで素振りをしているときには、すかさず五番を打つ渡辺選手が駆け寄っていた。

何を話していたのかはわからないが、二人の表情からは笑顔も見えた。緊張をほぐして自然体で打席に立てるような意図があったであろうことは想像に難くない。

純粋に「いいな」と思った。3年生たちが大きく見えた。

試合展開から目が離せない一方で、チーム一丸となって戦う姿に魅了された観客は多かったに違いない。

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9回裏の守備で北海の強さを見た

最高の試合を見せてくれた北海高校だが、9回裏の守備も素晴らしかったことを付け加えておく。

一死三塁と絶体絶命のピンチを迎えたものの、彼らは全員が「ここを切り抜ければ勝てる」と信じているように見えた。

その証拠に、ショートを守る辻本選手は笑顔さえ見せていた。

先制しながらひっくり返される厳しい試合展開の中で追い付いたのも、諦めない気持ちが根底にあったからこそだ。

そして最後の場面。

札幌国際情報の八番・須田翔選手が放った打球はセンターからやや右中間寄りの後方へ高々と上がった。

ランナーを三塁に置いた状況で、打球が上がった瞬間に北海ナインもわかっていたはずだ。もし追い付いたとしてもタッチアップのランナーには間に合わないことは。

でも、それでも全員が打球を追った。

外野手は落下点に向けて必死に走った。

内野手は中継の位置に向かった。

無情にもセンターの向こう側に打球は落ち、この瞬間に札幌国際情報のサヨナラ勝ちが決定した。

北海高校の選手はその場で崩れ落ちたが、この最後まで戦う姿勢こそが北海の強豪たる所以なのだと感じた。

一体感のある全校応援も圧巻だったし、この試合を通じて高校野球の素晴らしさを改めて感じさせてもらったように思う。

冒頭にも述べた通り、今年の北海高校は若い。つまり秋以降に残る選手も多い。

先輩たちが流した涙、そして、最後まで戦い抜いた誇りをしっかりと受け継いで、新チームに活かしてほしい。

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