コラム

東海大札幌が南北海道大会で注目を集めている本当の理由とは

言わずと知れた北海道屈指の名門・東海大札幌。毎年話題に上がる強豪校だが今年のチームも総合力が高く、2019夏の南北海道大会では優勝候補としても注目を集めている。

新チームになって以来、2018秋・2019春と全道大会にも縁がなかっただけに「さすがに優勝候補は大げさじゃ…」と感じている方もいるかもしれない。

もちろんスポーツに「絶対」などありえないし、夏の高校野球はその最たる例だろう。

センバツ優勝の東邦も、群馬の強豪・健大高崎も早々に敗れた。センバツ出場校の国士舘や佐久長聖もすでに予選敗退が決まっている。いずれも強いチームだったし、夏の高校野球ほど先が見えないものはない。

ただ、間違いなく今年の東海大札幌は南北海道大会での優勝に近い位置にいる。

初戦の鵡川戦の戦いを見て改めて感じた強さを、この記事に書き留めておきたい。

 

南北海道大会初戦で見せた落ち着き

南北海道大会の開幕日とあって内野席はほぼ満員だった2019年7月15日。注目の東海大札幌は函館勢同士の熱戦のあと、2試合目に登場し、室蘭支部を勝ち抜いた鵡川との対戦を迎えた。

3年生にとっては最後の夏の南北海道大会初戦、しかも現チームでは初めて札幌支部を勝ち抜いての舞台とあって、少なからずいつもとは違う緊張感に包まれていたであろうことは想像に難くない。

初回の攻撃はフライアウトを3つ重ね(1つはエラーで出塁)、ドラフト注目の小林珠維選手も力が入って珍しく三振を喫したし、エース・鈴木一茶投手も初回からカウントを取りにいくストレートを狙われて早々に1点を失った。

鵡川打線はよく振れている上に全校応援の勢いもあり、序盤から一気に流れを持っていかれてもおかしくない空気が球場には漂っていた。

しかし、そんな状況の中で東海大札幌ナインは落ち着いていた。

相手打線のストレート狙いを察知したバッテリーは、即座に変化球主体に切り替えて2回表を三者凡退に抑えて流れを引き寄せると、その裏の攻撃で鈴木一茶投手が自らレフトスタンドへ飛び込むツーランホームランを放ち逆転。

九番・服部大遊撃手、一番・柿澤英寿中堅手と二人の連打で畳み掛けた3点目も見事で、その後の試合展開を見ると「この1イニングで勝負を決めた」といっても過言ではないだろう。

個々の能力の高さ

2回を終えて3対1。流れに乗った東海大札幌はここからも攻勢をかけてリードを広げたが、得点を重ねる上で見えたのは個々の能力の高さだ。

2回に服部大遊撃手が放ったレフトオーバーの鋭い当たりも、明らかに九番打者のそれではなかった。

服部選手が上位の打順に入っている試合は何度も観てきたし個人的には特に驚かなかったものの、球場の反応を見ると多くの観客が「あのバッターが九番?」と言いたげだった。

昨今の野球において九番打者がいかに重要かは言わずもがな、観客にそれだけのインパクトを与える打球であったことは確かだ。ショートの守備も軽快で非の打ち所がない。

加えて3安打のリードオフマン・柿澤英寿中堅手はあわやホームランの打球も飛ばしていたし、二番に入る萱場斗夢右翼手も三塁打を放っている。決して二人とも大柄ではないものの、相変わらずこの一・二番はミートの上手さが光る。

その後ろ、三番を務める左の巧打者・亀浦凌佑選手は抜群の打撃センスと俊足ぶりを披露したほか、ファーストの守備でも冷静に打球を処理して3-6-1のゲッツーを完成させている。

2回以降、打者をねじ伏せる投球を見せた鈴木一茶投手も然り、挙げればキリがないほどに東海大札幌は充実した戦力を見せた。

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小林珠維のバントから見えたもの

それぞれの活躍ぶりが光ったこの試合で特に印象的だったのは、小林珠維選手の二打席目である。

150キロの速球を投げ込む一方で、道内屈指の強打者でもある小林珠維選手が送りバントを決めた。

この采配の思惑としては「試合を優位に進めるためにもう1点欲しかった」か、あるいは「力みが見えた小林珠維選手の気持ちを落ち着かせるため」との見方が妥当かと思う。

どん欲に次の1点を狙いに行く作戦は高校野球においてはよく見かけるし、三振を喫した一打席目を見て「あまり気負うな」とのメッセージだったのかもしれない。

ただ僕が感じたのはそういったことよりも、後続の打者で点を取れるという「ナインへの信頼」だ。

あのバントが他の選手たちの心を奮い立たせるものであったとしたら。小林珠維頼みではない攻撃への自信だとしたら、これほど心強いものはない。

現に小林珠維選手の後ろを打つ山本海斗三塁手・藤谷優真二塁手はいずれも好打者で、山本選手はチーム初ヒットを放つなどシャープなバッティングを見せていた。

藤谷選手も初戦で快音こそ聞かれなかったものの、彼の打撃センスを考えるとそんなことは小事だ。貴重な左打者として今後の戦いが楽しみな選手でもある。

2年生の小林陽太捕手も春にはクリーンナップを任されていたバッターだし、今年の東海大札幌は下位打線も十分に機能する。

そう考えると、あのバントは打撃陣への自信の表れだったように思えて仕方ない。

北海道唯一のU18日本代表候補には否が応でも注目が集まるものだが、決して一人のスーパースターに頼らない戦いが出来ることは、チームの強さを証明しているようにも感じる。

東海大札幌が注目を集める本当の理由

攻守で見せた個々のポテンシャルの高さはもちろんだが、東海大札幌が注目を集める理由はそれだけではない。

単刀直入に強豪・鵡川との一戦からは「勝利への執念」を感じた。これこそが東海大札幌の強さなのではないだろうか。

東海大札幌の野球は良くも悪くも「綺麗」だ。

中学時代には各校の主力級だった選手が100人以上も集まるのだから、その中から選ばれた18人は当然ながらレベルが高い。

ただそれ故に、リズムが掴めないときの攻撃が淡白になったり守備で精彩を欠くような場面も見受けられた。

それでも余りある魅力があるから毎年多くの球児が門を叩くのだけど、流れを引き寄せられずに敗れた試合も少なくない。

現に2018秋の札幌光星戦、2019春の札幌大谷戦と、強豪と互角以上に渡り合いながら「あと一歩」のところで落としている。

それが今のチームは一味違う。

もちろん最後の夏ということもあるのだろうが、サヨナラで制した札幌支部予選の札幌工業戦に南北海道大会初戦の鵡川戦と「勝利への飢え」とも言えるような気迫を感じた。

柿澤英寿中堅手がホームのクロスプレーで見せたヘッドスライディングなんかは、その象徴だったようにも思う。

彼の野球センスを考えると、送球が若干三塁側にそれた時点で直線的な進路をとることは予想できたが、躊躇なく頭から突っ込んでいく姿には驚いた。チームに勢いを与える、本当に素晴らしい先頭打者である。

また、萱場斗夢右翼手も長打を放った際に三塁ベース上でガッツポーズを繰り返していて、月並みな表現だが鳥肌が立った。

これまではあまり見られなかったような「泥臭さ」を感じられたからだ。

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積極的な走塁に勝機

最後に、その勝利への想いが一番見てとれた「走塁」について触れてこの記事を締める。

攻守に完成度の高さを示した東海大札幌だが、何より素晴らしかったのが積極的に次の塁を狙う姿勢だ。


たとえば三番の亀浦凌佑一塁手はライト線への長打を放った際、迷わず三塁へ向かった。

俊足ぶりはそれまでの打席でも見てとれたが、二塁到達時点でライトは打球に追い付いていたし、あれをツーベース止まりにしてしまうバッターの方が多いだろう。

でも彼は迷わず三塁へ向かった。

さらに亀浦選手はヒットを放った際のオーバーランも素晴らしく、少しでも相手守備にほころびが出ようものなら二塁を陥れそうな勢いがあった。

全国屈指の強力打線を擁する東海大相模も、強打に注目が集まる一方で一塁のオーバーランにも毎回感動するが、東海大札幌の選手たちも走塁への高い意識がある。

そして、果敢に次の塁を狙い、それを「好走塁」にしてしまう脚力もある。

勝利への執念をそのまま走塁で体現できている今の東海大札幌は強い。

札幌支部予選で苦汁をなめ続けたチームだけに、最後の夏を最高のカタチで終えたあとにぜひ聞きたい。

「あの悔しい経験があって俺たちは強くなれた」と。

参考:2019夏・東海大札幌の注目選手|強さの秘訣は小林珠維だけじゃない

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